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穀物の価格上昇はなぜ起こるのか?世界の食料安全保障の未来を専門家が解説

穀物の価格はなぜ上昇しているのだろうか。穀物の価格上昇により与える影響を『農業理想』連載第1号として、東京農業大学総合研究所特命教授の末松広行氏が解説する。

はじめに
連載開始のご挨拶

私が末松広行氏と出会ったのは彼が小泉内閣の内閣参事官時代だ。その後、末松氏は農林水産省食料安全保障課の初代課長に就任し、私は食料自給率向上のためのアイディアを出すことを依頼された。

私は幼少期をJA の敷地内の寮で育ち小5の時、インドの政治指導者マハトマ・ガンディーの伝記の感想文で「この学校の周りは田畑だが、なぜ地元の食材を給食に使わないのか?戦争に負けることは献立まで他国に支配されることか?」と書き教師たちを困惑させた事がある。米軍のキャンプFUJI と自衛隊機甲(戦車)教導連隊が駐屯する土地柄、戦争を近くに感じ十代を過ごした。

ロシアがウクライナに軍事侵攻し、その被害がエネルギーと食料問題に直結する姿を全世界が目の当たりにした。今、世界ではどのようなことが起きているのか。『農業理想』連載第1号では、この問題を末松氏に語っていただこう。

(インタビュアー:小見山將昭)

世界の食料安全保障の未来
食料と石油の価格について考える


最近、食料安全保障について議論されることが増えてきました。小見山さんと食料自給率向上について議論した2008年当時に較べても、最近の穀物価格の上昇ぶりは大きいものがあります。

2008年当時、高騰した食料価格は秋以降下がっていったのですが、その理由はロシア・ウクライナ地域の小麦の大豊作が影響していると言われていました。その地域が現在は紛争状況にあることなど、今回の食料価格の高騰に関しては不安な要素が多いのが事実です。

食料のうち、人間が必要とするカロリーを供給するメインのものは穀物です。穀物の価格はなぜ上昇しているのでしょうか。穀物を必要とする人口が増えていること、肉食が増え家畜に与える飼料がたくさん必要になってきていることで需要が増大していくのに対して、穀物生産が追いつかないのではないかということが大きな理由と言われています。

実は、これだけでなく石油の価格も穀物の価格に影響しているというのが最近の大きな特徴となっています。地球温暖化を進めないために、化石燃料を減らし、再生可能エネルギーを増やしていくことが重要になっていますが、化石燃料であるガソリンを減らして再生可能エネルギーであるバイオエタノールを増やして行こうという取り組みも進みつつあります。

バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシから生産されます。アメリカのトウモロコシはかなりの量がバイオエタノールになっています。ガソリン価格が上がれば、同じくクルマの燃料になるバイオエタノール価格も上がります。トウモロコシをつくる農家はバイオエタノールに出荷したほうが儲かるということになりますので、普通の食料・飼料として出荷する価格もガソリン価格の上昇に影響されて上昇していく、というわけです。

これは小麦価格にも影響します。トウモロコシをつくるか小麦をつくるかは選択できるので、小麦価格も高くないとトウモロコシに流れてしまうということです。地球温暖化防止はとても大切なことです。しかし、食料との関係では燃料利用よりも食料利用を優先していくようなことを世界中で考えていくことが大切な時代になってきていると思います。



筆者プロフィール

末松広行氏

東京農業大学総合研究所特命教授、東京大学未来ビジョンセンター客員教授。
2018-2020 農林水産事務次官、
2016-2018 経済産業省産業技術環境局長、
2002-2006 内閣官房内閣参事官 等。

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