注目キーワード

生産者の取組み

成功する農業後継~時代を超えて繋がれた”先々代の夢”

時代を超えて繋がれた
独自の生産方式

貴基さんの祖父にあたる先々代は、戦後、横浜の保土ヶ谷で友人の土地を借り、庭先養鶏を始めた。当時たまごは高級品で、少量生産・直接販売が主だった。

その後、国内の経済成長と米国の飼料作物の輸出政策により、食の洋食化が進み、養鶏業も大規模化の時代を迎える。養鶏農家の仲間たちは郊外に移り、大規模な設備投資をし、生産効率優先の経営へと舵を切っていった。しかし先々代は、その道を選ばなかった。

現在の千葉県袖ケ浦市に場所を移し、長男(先代・富基さんの兄)とともに小規模な養鶏を始めるも、数年後、長男が病に倒れ他界してしまう。当時、自動車会社に勤めていた富基さんが、やむなく家業を手伝うことに。小さな鶏舎を少しずつ建て増ししながら、買い手と近い距離での生産販売を志向し続けた。

「お金もなかったし、度胸もなかったから」と富基さんは当時を振り返るが、地域生協との取引が始まったこともあり、『お客様の近くにいたい』という想いが強くなったのだ。

規模が小さくてもいい。
お客様の声とともに

一部であっても、直接お客様に販売するとなると、通年生産をし、生産の山谷なく出荷し続けなければならない。高いレベルで品質を安定させることも求められる。

先代・富基さんは、お客様の声を頼りに、大きくて元気なたまごを生産するため、試行錯誤の日々を送った。通常の3倍以上の頻度で鶏の入れ替えを行い、大きなたまごを産む大型品種の若鶏を積極的に導入するなど、手間とコストがかかる独自の生産方式を採用していった。

いつの間にか富基さんは、一般流通のものとは全く異なる “コシの強い” たまごを生産していたのだ。少しずつ工夫を重ねていった先々代と先代・富基さん親子の想いが、特別なたまごを生み出していた。

< 123>

農業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. 軽トラカスタムの新潮流!親しみやすさが人気の『レトロカスタム』
  2. 【植物工場ビジネスの最新動向と課題】現状は赤字が約半数。エネルギー削減の取り組み進む...
  3. 魚のフンが肥料に!? 循環型農法「アクアポニックス」をパッケージ化した次世代農場...
  4. ハイスペックで格好良い!「次世代軽トラ」の実力
  5. スマート農機の自動操舵がより正確に! ソフトバンクのRTK測位サービスに迫る...
  6. 太陽光発電を活用し、天候や昼夜を問わず種まきと除草を自動化できる自走式ロボットとは?...
  7. 高温・乾燥ストレスの予防に!「海藻」の恵みを植物へ届けるバイオスティミュラントとは?...
  8. 世界初の量産型農業用無人車が登場! XAG×バイエル『R150』散布と運搬を自動化...
  9. 成功する農業後継「子供の頃から農業が嫌だった」
  10. 植物の免疫力と鉄吸収力を高める! “ビール酵母”がベースのバイオスティミュラントの実力とは...

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.32|¥0
2024/07/19発行

お詫びと訂正